行政書士の業態考察

行政書士をビジネスとして考える

新人行政書士がやりがちな間違った無料相談について

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起業すると、何かにつけて「金よりもまずは信頼が大事だ」と言われます。

しかし、起業したての士業がこの言葉を鵜呑みにすると結構痛い目に合います。

 

無料相談をとおして自己を知る

「商売はギブ&ギブだ!」といって策もなく無料相談を続けていたら、いつまでも便利なパシリ君として使われます。

いいように無料相談でこき使われて、相談者が満足したタイミングでポイされるだけです。

「続けていたらいつか仕事をくれるかもしれない」「もしかしたら良い人脈を紹介してくれるかもしれない」と盲信しても、なかなか良い結果には繋がりません。

いたずらに無料相談を繰り返して時間を消耗するくらいなら、当面は今の仕事で給料を稼ぎながら、市場調査に時間を注ぐ、もしくは受注からクロージングまでの流れ作りに時間を注いでください。

そのほうが開業後、軌道にのるスピードは確実に早くなります。

 

どうしても無料相談をしたいのであれば、平行して以下の点の把握に努めてください。

  • どこからの相談が多いか
  • どのような相談が多いか(民事、許認可)
  • 相談の内容はどうか(業務に繋がりうる / 繋がらないが解決できる / 手間賃だけは頂け売る  等)
  • 2回目以降の相談に繋がりうるか(あらかじめ2回目以降は有料、などと謳っておくことを推奨)
  • 自身のヒアリングスキルはどうか
  • 無料相談をやってみて、自分自身の気持ちはどう変化していくか 等

これらの点を意識しながら無料相談を繰り返していると、自分なりの集客手法、相談の乗り方が分かってきます。

また「無料相談を受け続けるのは、まったく割りに会わない仕事だな」と肌身で実感できます。

それを実感できて初めて「ここの段階までなら無料で良いけど、ここから先はさすがに手間賃を貰わないとやってられないな」と感じることができます。

 

その手間賃こそが有料相談です。

 

有料相談の値付け方法

たとえば行政書士で、まずは年商600万円稼ぎたいとするなら、月50万円の売上が目標になります。

サラリーマン思考をしてはいけないですが、たとえば土日は事務所を休みにした場合、月23日稼働することになります。

1日で約2万2千円をコンスタントに稼ぎ続けなければいけません。

休憩抜いて8時間働く場合なら、1時間につき2,750円稼がなければなりません。

 

相談を1件受けると、ヒアリングで30分~1時間、移動で30分~1時間、調査で30分~1時間、回答で30分~1時間で、少なくとも2時間~4時間は必要になることがわかります。

(なお、初見分野の調査は、たいてい1時間では終わりません) 

 

1時間2,750円稼がなければならないのに、4時間働いて0円です。

無料相談を続けることで1回につき‐11,000円の赤字を垂れ流します。

 

10件受けると、110,000円の赤字になります。

何もかかっていないようで、これだけの機会損失が発生します。

 

 

もちろん、1件でもクロージングができれば、十分に巻き返せる金額です。

士業事務所でスキルと人脈を十分に築いたうえでならともかく、実績もスキルもなく開業した場合は「便利な御用聞き」というポジションになりがちです。

「(お金払う気はないんだけど)ちょっと聞きたい」とか「(タダなんだったら、ちょうどいいや。)ちょっと相談してあげるんだけど」というレベルの相談が圧倒的多数を占めます。

相談を繰り返せば繰り返すほど、赤字を垂れ流す地獄が待っているので、2回目以降は有料〇円、として最初からストッパーをかけておきます。

どうしても無料にせざるをえない事情がある場合は、条件をつけて無料にしたら良いです(必ず事前に説明してあること前提)。

 

自発的無料相談

「自信がないから」という理由で、自発的に無料相談にしてしまうこともあります。

「組織化して、とにかく数をこなす」という戦略をとるのであれば、無料相談で徹底的み受け口を広げ、相談はバイトスタッフや社員に託す、ということもできますが、個人のうちで同じ戦略をとり続けることはできません。

やれなくはないですが、続けていると確実に心を消耗します。

このようなことをしてしまうのは、勉強不足による知識の無さによります。

取扱い領域の全てを実践レベルでマスターするのは、不可能に近いです。

手引きをもとに、質問された内容は回答する、回答しようがない場合は、ヒアリングをとおして相手が何を知りたいのかを明確にしたうえで、後日回答を差し上げるなどすれば問題ありません。

 

信頼≠無料相談

今になってつくづく思いますが「信頼を作ること」と「無料相談を続ける」ことは全く別の話です。

ここを勘違いするから「間違った信頼関係」が出来上がります。

(「あの先生なら、こっちのいうことを何でも無料でのってくれるぞ」という

不本意な信頼です)

 

困っている方のお役に立てるのは嬉しいことですが、それで自分自身が消耗してしまっては、本当に苦しいです。

だから、目標月商を達成するなら時間級ベースでいくら必要なのかを明確にしたうえで「初回無料」「2回目以降は〇円(調査結果の報告、提案込み)」の形など、相談そのものを有料商品として設計することをお薦めします。

というか僕自身そうしておくべきでした。

 

行政書士先生がたはこの点どのように考えているのでしょう??